メーカーの責任
人の口や身体に入れる製品の生産や販売は怖いと書いたが、その昔にオヤジが
勤めた会社でも多くの事件があった。今で言うところの「クレーマー」攻撃が
それだ。人間は、我々が知るような範囲の者ばかりでなく、意地汚く事あれば
何か理由を付けて金をふんだくってやろうと言う輩は多い。事故で身内が亡く
なりまだ悲しみが残る中、すぐ補償問題の話しを切り出す者もいる。とにかく
尋常でない奴は多い。話しに戻るが、オヤジが新人の頃、静岡の食品担当者に
顧客からクレームが入った。子供がレトルト食品を食べようとしたら、水銀が
入っていた、と言う内容だった。担当者が支店に持ち帰って、皆で見てみると
確かに表面に水銀らしい粒がいくつかあった。どう考えても工場での生産時に
混入したモノとは考え難かったが、支店長と担当者は菓子折りを持って、直ぐ
お詫びに出掛ける始末だ。ここがポイントで、そんな事はあり得ないと思って
いても口に出せないのだ。ちょうど翌日が生産販売会議だったオヤジは、翌日
そのままのスタイルを崩さない様に、箱に詰め風呂敷に包んだ「ブツ」を持ち
網棚にも上げず新幹線に乗って大阪本社まで運んだ。本社も同じ見解だったが
それを証明するには時間が掛かる。結局その間、担当者は日参して謝罪の連続
だったようだ。結末は、お詫びに通っているうちに親しくなった子供さんから
体温計を壊してしまった話しが「ポロっ」と出てジエンドとなった。親たちは
真っ青になってしまっただろうが、みんな子供の気持ちのまま成長して欲しい。